~鬼頭式 江口式の考察~
突然ですが、PTNAのセミナーでもお馴染み、石黒加須美先生の下で、ここ数年、私はピアノ指導法を学ばせていだいており、その一環で江口式の絶対音感トレーニング法を学び、この度、江口式も指導出来るようになりました。
石黒加須美先生は江口式考案者・江口寿子先生のお弟子さんで、娘さんを江口式音楽教室へ通わせて、絶対音感を身につけさせています。
その娘さんは今や立派なピアニスト、指導者としてご活躍されています。
石黒先生からのお話は、実際に母親視点からの経験談も含まれ、とても具体的な内容で大変勉強になりました。
ここで、鬼頭式と江口式について比較整理し、私なりの視点で考察してみたいと思います。
まず、二つの絶対音感トレーニングですが、やり方は違えど、
『絶対音感を身につける』
という最終目標は一緒です。
そして、学ぶうちに、実はどちらのトレーニング法も共通点が意外と多いことがわかりました。
はじめに、あえて違いを述べると、
ズバリ!
考案者に絶対音感があるか、ないかです。
鬼頭式考案者の鬼頭敬子先生は
絶対音感保持者、
江口式考案者の江口寿子先生は
絶対音感をお持ちではありません。
あくまで私の感想ですが、
江口式は
しっかり身につけさせたい、との思いからなのでしょうか、正誤の記録をつけ、統計を取り、トレーニング成果を細かく分析しながら進めていきます。
結果として、これだけやれば確かに身につくだろうな、という印象を持ちました。
江口式は音を色で判別しますが
その点については、私の場合、その日の気分で、色のイメージが変わるタイプなので、必ずしもドミソ=赤と結びつけてしまうのは、やや抵抗があります。
というのも、即興演奏で色を表現した時に、例えばドミソが白と感じる日もあれば、青と感じることもあります‥ですので、色が固定されてしまうと、多少息苦しく感じることがあります。
ただ、江口式が色で取り組むのには理由があり、子どもにとって、『色』は親近でわかりやすいから、なのだそうです。
小さな子どもでも色の名前はすぐに覚えられますので、導入しやすいという点では納得出来ます。
一方、鬼頭式は、始めから読譜も兼ねて記譜された音名、コードネームを読みます。そのままの音名、コードネームですので効率的と思います。
小さな子どもに読譜は難しいのではないか、と質問を受けることがありますが、
子どもはフラッシュカード式に絵のように覚えてしまいますので、覚えられないことはありません。
実際、鬼頭式で今まで指導してきて、絶対音感が身についた生徒さんは譜読みがとても速いです。
一瞬で見て答えるトレーニングをしていますので、楽譜を見ただけで、音が頭の中に浮かびます。
ですので、ピアノに移行してもサクサク譜読み出来、テキストの進みが速い傾向にあります。
同時にコードも覚えていますので、調性感が早く身につきます。
例えば鬼頭式では、
Fはファラドと弾いて覚えますが
ドファラ(展開形)がピアノで出てきても
「Fの音がする!」というように、すぐにコードと響きが結びついて理解出来るため、楽曲構成に興味を持つ生徒さんが多い印象です。
また、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードを織り交ぜて聴き分けするため、コードが持つ雰囲気を、自然に感じ取ることが出来るようになります。
江口式が色旗で進めるのに対し、
鬼頭式のアプローチの仕方は、子どもの好きなものを一緒に考え、その好きな気持ちを応援していくという方法でトレーニングを進めていきます。
子どもの話を聞く、子どもとの絆を深めることに重点を置き、コーチング手法を取り入れながらトレーニングを行いますので、絶対音感獲得後の親子関係が良好です。
そして鬼頭式では、終了すると、絶対音感検定が受けられます。
合格という目標を持って取り組むので、モチベーションを保ちやすいのではないかと思います。
さて、共通点はというと、
トレーニング時期が限られていること。
脳科学の観点からも、やはり幼少期でないと絶対音感はつかないと証明されていますので、どちらの方法でも、トレーニングは幼少期に行うのがポイントです。
(※相対音感は大きくなってからでも身につきます)
また、毎日親御さんと二人三脚でトレーニングする、ということも同じです。
それも、一つ一つ音を増やしていきます。
間違えたらインプットし直しますが、
音を聴く回数や、軌道修正していく方法もほぼ同様です。
音を覚えるのにあたり、調律された、アコースティックピアノでトレーニングを行うことを推奨しているのも共通事項です。
アコースティックピアノは倍音の響きがありますので、電子ピアノの生徒さんより絶対音感獲得までの期間が早いように感じています。
電子ピアノは、手入れが簡単(調律不要)で壊れにくく、音量を調整出来たり、サイズもコンパクトで良い面はありますが、一音一音サンプリング(録音)された音を電気でスピーカーを通じて音出ししているだけなので、音の鳴り方、構造がそもそも違います。
アコースティックピアノは大まかに言ってしまうと、ピアノ全体で音が鳴っていますので、電子ピアノとは音の鳴り方が全く異なります。
一音弾くだけでも、実は複数の弦の音が鳴っています。(これが倍音です)
小さな子どもの聴覚はとても優れていますので、倍音の響きとともに覚えると違いがわかりやすいのです。
後々ピアノへ移行した時、倍音の響きが聴ける生徒さんは圧倒的に表現豊かな演奏が出来るようになります。自分の奏でた音色をしっかり聴きながら弾けるようになることは、どんな楽器においても大切なプロセスだと感じています。
もし可能でしたら、小さい頃から倍音の響きを体感出来るように環境を整えておくことをおすすめします。
私自身は、ピアノを習っていたら、物心ついた頃には絶対音感が身についていた、という感じでした。
トレーニングしなくても身につく場合はもちろんあります。
私の場合は、気づけばいつも楽器の前にいて、鍵盤でよく遊んでいたそうです。
幼い頃の記憶ですが、ある時、たまたま鳴らした複数の音が綺麗だなと感じて、他にも響きの良い音を探してみたり、
ある時、一つの曲を、違う音から弾いてみたら弾けるようになり(移調)、大発見した!と誇らしげに両親に報告していたこと等、記憶を辿れば、そのような遊びが絶対音感獲得に繋がっていったのではないかと思います。
このように自然に身につく場合もありますが、トレーニングでも身につけられるというのは魅力的ですよね。
幼少期からコードを知っていると、音楽をする上で非常に役立ちますし、絶対音感と言っても、単音だけ聴き取れる方、複数音が聴き取れる方では、精度がかなり変わってきますので、せっかくなら、幼少期から様々なコードに触れ、コードのイメージを掴んでおくことはとても重要なことではないかと日々感じています。
実は音大生でも、メロディ聴音は出来るけれど和声(和音)聴音は苦手!という方は結構多いのです。
小さい頃から絶対音感トレーニングを通して、コードの響きに興味を持つことが出来たら、きっと音楽を存分に楽しめるのではないでしょうか。
というわけで、ざっくりと私の主観からの、鬼頭式、江口式の考察をしてみました。
絶対音感に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
◯現在、当教室では絶対音感×リトミック併用レッスン枠に若干空きがございます。
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